村山 亜矢子
村山 亜矢子
高砂熱学工業株式会社 人事戦略統括部 健康推進室
略歴
1998年 | 聖路加看護大学(現聖路加国際大学)看護学部2年次 編入 |
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2001年 | 国家公務員共済組合連合会虎の門病院 入職 |
2004年 | 情報通信業 入社、出産のため退職 |
2010年 | 東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻地域看護学(修士課程) 修了、コニカミノルタ株式会社 入社 |
2018年 | 高砂熱学工業株式会社 入社 |
2023年 | 同社 人事戦略統括部健康推進室統括保健師(現職) |
現在のお仕事について教えて下さい(業務内容や日々のお仕事中の様子など)。
現在の勤務先は空気調和設備の施工管理、保守・整備を行う建設業です。入社当時は社内に健康管理組織がなく、人事部給与グループに所属しながら、産業保健体制の構築を担いました。健康推進室(2019~2020年は健康管理室)が組織されて以降は、全国に点在する支店の産業医・健康管理担当者と連携し、産業保健活動の拡大、質の向上を目指して日々の業務に従事しています。現在は、健康相談、健診事後措置、健康教育など事業場の保健師業務と並行し、統括保健師として全社施策の展開や各支店の課題の抽出と全社方針に基づいた解決支援等を行っています。
新入社員研修の様子
学生時代についての思い出(例:所属サークル)や当時考えていた将来の方向性について教えて下さい。
1つ目の大学時代には、国際交流や海外インターンシップを通じて、若者のリーダーシップや可能性を最大限に引き出し、世界経済の活性化と平和を目指すという、壮大な目標をもつサークルに所属していました。約1ヶ月かけてイスラエル国内を旅したり、中国での植林活動に参加したりと、人生観を変える貴重な体験をした時期でした。振り返れば、学生時代のこの経験が、経済活動と安全・平和な生活とが結びついているという意識を持ち、企業活動を支える産業保健に関心を持つきっかけとなったかもしれません。看護大学時代は学業とバイトの両立のため、ただただ多忙に過ごしました。
産業衛生の道を志した時期(年齢・年代)やきっかけについて教えて下さい。
大学3年の夏休みに病院ボランティアに参加し、活動を通じて自分の職業適性について考える時期がありました。また、その病院で看護大学の学士編入制度について知り、看護の道を志しました。大学やサークルの同期生はほとんどが企業人のため、企業や経済の動向に関心があり、働く人の健康支援を通じて経済活動を支える医療職、という点で産業保健師に魅力を感じ、20代後半に産業保健に転向しました。
新人時代の思い出について教えて下さい。
初めて腰を据えて産業保健師として勤務した2社目の製造業の企業では、統括産業医を中心に産業保健体制が確立されており、保健師も時間的な余裕がある中で、業務に集中することができました。産業保健職が企業内で活動する意義や根拠を深く考えながら、未経験の業務は学びつつ進めることができる贅沢な環境でした。私生活でも、長女の受験や第2子の出産、夫の転職など多くの変化がありましたが、支え合い、補い合いつつも切磋琢磨できる仲間のおかげで、あの時期を乗り切れたと振り返ります。多種多様な価値観があり、各自が望む働き方が異なる中で、組織の最適な在り方を考え、良い方向へ進むようにと奮闘したことが思い出されます。
人生における転機やキャリアプランに関わる大きな出来事がありましたら教えて下さい。
私の転機はライフイベントによる退職と、大学院進学です。臨床から転向して入社した1社目の会社は、産業保健体制も完成された大企業でしたが、予定外の妊娠により入社後すぐに退職することになりました。もしその企業で就業を継続していたら、大学院進学も、産業保健体制の立ち上げ業務に携わることもなく、人生における「挑戦」には消極的に過ごしていたと思います。また、大学院在学中に家族の病気が見つかり、後に若くして失った経験から、人が働く意味や、試練を乗り越える意味を考えるようになりました。そのため、仕事や人生の分岐点では、多少無理をしても悔いのない選択をし、 充実した人生にしたいという想いが強くなりました。
修士課程修了式後に研究室にて
転機を越えた後の新たなキャリアにおける思い出を教えて下さい。
1社目を退職し、約1年間出産・育児に専念した後、行政保健師として復職しましたが、産業保健師として働くことを諦められませんでした。院時代には、新たな学びや研究、他職種から刺激を受け、産業保健をライフワークとしたい気持ちがさらに強くなったことを覚えています。その後、無事に産業保健師として就職しましたが、それまでの経験を違う環境でも活かしたいと考え、再び転職をしました。展開すべき産業衛生活動が職種や経営方針・企業風土によって異なることがとても興味深く、企業特有の課題の解決にやりがいを感じながら日々の活動に取り組んでいます。
本学会との関わりやメリットについて教えて下さい。
学会には学生時代に入会し、現在は生涯教育委員として参画させていただいています。未熟なため、先生方にご迷惑をお掛けしつつも、他職種の視点やクリティカルかつ的確な査読、判断に刺激を受け、貴重な学びの機会をいただいています。学会、全国協議会への参加には、産業衛生関連の法規や課題、トレンドについて情報を得るほか、同じ悩みや志をもつ仲間と繋がることに大きなメリットを感じています。また、 学会で得た情報や学びを自身の産業衛生活動に反映させることや、客観的に顧みて軌道修正する材料とすることで、勤務先への還元も可能となり、自身が得るものも倍増すると考えます。
これから産業衛生の道を志す方々に向けて、メッセージをお願いします。
人が働くことで得るものは、自己実現の機会、組織への貢献や承認から得られる自己肯定感、繋がり、達成感や成長など非常に多く、また多様です。産業保健職は、その営みに寄り添い、個人と組織の健康を支援し、社会に貢献できる魅力的な職種です。キャリア形成の過程では、ライフイベントやその他の障害により、挑戦や成長の機会を阻害される時期が誰しもあるように思います。しかし、やむを得ない変更や選択による不連続なキャリアでも、それを集積し自分の中で整合することで、専門職としての知見がより豊かになります。自分自身の人生の変化も楽しみながら、同じ産業衛生専門職として共に成長し続けていきましょう!