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日本産業衛生学会利益相反ポリシー付録Q&A



Q1.A社の社員で常勤の産業保健師をしています。会社の従業員を対象に調査を行いました。ある程度の知見が得られたのでこれを学会で発表しようと考えています。研究目的は産業保健に普遍的なものであり、研究対象となった社員については、もちろん社名を明らかにすることはしません。しかし、COIポリシーの趣旨から考えると、発表者の所属を明らかにしなければなりませんが、これにより、研究対象が当社の社員であることがそれとなくわかってしまうことに不安を感じています。

A1.これはCOIが問題になる前から、企業に属する会員の学会発表でしばしば話題になってきたことです。COIとの関係性は薄いと思われるものですが、学会発表を聴く立場から言えば、研究内容とその発表者の所属を見て、発表者に深刻なCOI状態にないことを確認する必要があります。所属を明らかにすることで、研究対象が暗示されるという見方もありますが、研究として行ったものであれば、結果から得られる所見はA社の社員であるか否かにかかわらず、広く利用できるものであるはずです。また、実際には会社が発表することを了承しているのが通例であり、研究と社名を結びつけられることで、いわゆる風評被害のような悪影響を受けることないと会社は判断したと言えます。

Q2.B社の専属産業医をしていますが、同時にC大学の研究員として指導を受けています。社内のメンタルヘルス対策に関する学会発表を、C大学の教授とともに行おうと考えていますが、会社側は社内のメンタルヘルスの状況が公表されることに難色を示し、発表する際の所属をC大学にしなければ、発表を認めないと言っています。所属をC大学としても構わないのでしょうか。

A2.これも上記のQ1と同様ですが、発表者は主な収入を得ている所属が研究対象となる職域の企業であることを明示する必要があります。以前には製薬企業の社員が、研究を行った大学を所属先としたことで、研究対象の医薬品と所属企業との関係を隠蔽したことが強く批判されています。メンタルヘルスに関する研究発表の内容によってはCOIとは直接関係はない場合もあると思われますが、研究対象と所属の関係が開示されなければ第三者は判断できません。問題は所属企業を明らかにすることを雇用者である所属企業が認めないと言っていることにあります。したがって、この場合研究対象は発表者が主な収入を得ている所属企業であることを固有名詞を出さずに演題中に明記する方法が考えられます。COIマネジメントを工夫して適切に行い、研究そのものが抑制されないようにしてください。研究発表の積み重ねが、メンタルヘルス対策の発展につながり、企業に利益をもたらすことを時間はかかっても所属先に理解してもらうことが必要です。

Q3.大学の准教授です。私の所属する講座では職場で取り扱う有害物ばく露防止の保護具の開発を行うD社から今年度50万円の奨学寄附金を大学経由でいただいています。今回、D社の社員と化学物質管理のあり方について検討を行い、学会主催の学術集会で講演を行う予定です。奨学寄附金は当講座宛で受け取っているものではなく、また具体的な研究課題に対していただいているものではないのですが、申告の必要はありますか?

A3.主催する学会のCOI規程に基づいて、基準となる金額を超えている場合には申告の必要があります。この場合講演の内容と受け取っている奨学寄附金は直接関係がないように思われますが、全体としてはあなたの属する講座がD社から利益供与を受けている構造であり、申告の必要なCOI状態といえます。また、奨学寄附金が大学に対して支払われていても、最終的にあなたの講座に渡るのであれば、それは直接受け取っているのと同様に考えなければなりません。奨学寄附金にははっきりしない点が多く、扱いが難しいと言われていますが、具体的な研究課題、宛先には関係なく、最終的に受け取っていれば、申告の対象になります。

Q4.労働衛生コンサルタント事務所を開業しています。契約を結んでいる複数の会社の従業員の生理学的検査のデータをとりまとめて学会で発表しようと考えています。これらの会社に対しては嘱託契約だけでなく、顧問契約のところもあります。ただし、受け取っている金額はすべて申告が必要な額を超えています。発表することに対しては各会社から承諾済みです。発表あたり、すべての会社名を申告すべきでしょうか?

A4.学会で決めているCOI規程に基づいて、顧問契約の有無については顧問料支払いの有無にかかわらず、申告が必要です。ただし、労働衛生コンサルタントとして活動した対価として受け取っている給与については申告の対象にはなりません。あなたご自身はいわゆる開業コンサルタントであり、被雇用者ではなく個人事業主で、所属はコンサルタント事務所になります。ただし、対象となった企業から委託研究費を受け取っている、株を保有しているなどの関係がある場合は申告が必要です。

Q5.大学の教員です。これまで測定が困難だった作業環境中の有害因子を測定するための機器を開発した企業の製品を用いて当該有害因子が問題となる作業環境の測定を行い、学会で報告しようと考えています。会社からは製品の測定機器を無料で貸与してもらいました。COIマネージメントのためには何をすればいいのでしょうか?

A5.自社が開発した測定機器を用いて学会発表、学術論文の発表が行われることが、製品の信頼性と知名度を上げることから、会社は無料貸与というサービスをしたと考えられます。この場合は仮にリース契約などの方法で使用した場合に必要な費用を見積もり、その額がCOI申告を要する額を上回るようなら申告が必要になります。リース契約などの公式なサービスが存在せず、見積もりが困難な場合は謝辞にその旨を記すことで、対処するのが妥当です。

Q6.許容濃度未勧告のある物質を含む製品を製造する会社の産業医です。当該物質を取り扱う作業者のばく露状況、健康影響について報告することを考えています。共同研究で指導を仰いでいる大学の非常勤講師になっていることもあり、会社からは発表する際の私の所属に会社名を出さず、大学にして欲しいと言われています。どう対応したらいいのでしょうか?

A6.この研究結果は今後、当該物質の許容濃度を検討する上で重要なものとなるとともに、勧告された許容濃度によっては会社が大きな影響を受けることが予想されます。会社としては研究に関わっていることを伏せておきたいという意思が働き、発表者名の所属を大学にすることを求めていると考えられます。この場合、Q2と同様、主な収入を得ているという意味からも所属している会社名を明らかにしなければなりません。所属先を示すことで研究対象物質をその会社で取り扱っていることも明らかになりますが、その開示がなければ研究に企業の利害関係が関わっていることを隠ぺいしていると見なされる恐れがあります。所属会社名を明らかにすることで研究の信頼性に対して様々な見方が生まれることが予想されますが、それを避けることは困難と思われます。

Q7.企業の産業医が産業保健関連の講演を行う際、所属する企業の紹介とともに主力商品を示すなど、販売促進のための宣伝と変わらないと思われる話を導入部で行っているのを見かけます。これはCOIという観点からどう考えるべきなのでしょうか?

A7.確かに、講演の冒頭では講演者の背景を説明することが通例になっています。その場で所属している企業の生産活動についての紹介や、一般によく知られている主力商品を明らかにすることで理解をさらに深めてもらう意図で行っていると考えられます。このような行為に違和感を感じる向きもあるかも知れません。しかし、講演者は勤めている企業を明らかにした上で行っているもので、講演者自身がCOIを開示して適切にマネジメントしているといえます。特に問題はないと考えられます。

 
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