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日本産業衛生学会利益相反ポリシー



Ⅰ.はじめに
Ⅱ.基本的な考え方
Ⅲ.日本産業衛生学会における研究活動の特性とCOI
Ⅳ.研究・学会活動に関わる注意事項
Ⅴ.COI申告
Ⅵ.本学会の社会への説明責任
Ⅶ.COIポリシー、細則に関する教育研修など

Ⅰ.はじめに
日本産業衛生学会は日本医学会の社会医学系分科会であり、会員が行う研究活動に対しては、日本医学会が発表している「COIマネージメントに関するガイドライン」(2011年3月公表、2015年3月一部改定、以下ガイドライン)を基本とした対応が求められている。本ポリシーはガイドラインを踏まえながら、本学会に特有の会員構成、研究課題、研究環境から生ずる利益相反(以下COI)に関わる条件に基づいて、会員の研究条件に即したより具体的なマネジメントのあり方を示し、会員の理解を促すことを目的として策定するものである。

Ⅱ.基本的な考え方
日本産業衛生学会における研究活動の基本的な分野は言うまでもなく医学研究であり、ガイドラインも述べているように、人を対象とするものが中心である。産学連携の研究はしばしば行われ、時には研究者自身がベンチャー企業の経営に関わるといった形態もみられる。本学会では学術集会における研究発表、学会誌における研究論文掲載、広く国民の健康確保に向けての提案、啓発、勧告などの活動、職能・生涯教育、資格認定などの活動を行っている。それぞれの活動は学会員、学会役員などが各学会の果たすべき役割を認識し、科学者・専門家としての学識、創造性、良識に基づいて行うものである。特に本学会の活動は臨床医学を専門とする学会と比較し、社会の主要な階層である働く人々を対象としていることを考えれば、その影響がより広範にわたることが十分に考えられる。例えば研究成果として推奨・回避すべき生活習慣を明らかにすることは直接企業などの経済活動に影響を与える、許容基準等の提案によって企業の生産活動が影響を受ける、さらに職域における有効な健康診断のあり方の検討など広く働く人々の健康の保持増進に関連し、ひいては政府の労働政策にまで影響が及ぶことも少なくない。重要な研究を行えば、それに伴って様々な利害関係が生じることは避けらない一方、研究者、研究機関は根拠に基づいた科学的な考察、判断のみに依拠して研究活動を行わなければならない。研究活動がもたらす利害関係、さらに社会の利益と研究者・研究機関の利益が相反することをもって研究の信頼性に疑問が生じたり、研究者・研究機関にあらぬ疑惑がかけられることは避けなければならない。また、不適切なCOIへの対応が、社会的な批判を受けることで、産学連携研究の抑制、さらに研究活動全体の委縮を招くことも、社会が学会に求める役割を果たすことを妨げるものである。医学全体がそうであるように、本学会がカバーする分野でも、活動に伴う利益相反については適切にマネジメントを行い、研究がもたらす利害について常に透明性を確保するとともに説明責任を果たすことが不可欠であり、そのための仕組みづくりの基本原則を明らかにすることが本ポリシーの役割である。それは会員である研究者、属する研究機関、及び学会そのものが社会的な役割を果たす上で求められる説明責任、透明性、客観性、独立性を確保するための基本となり、会員の自由闊達な研究活動とともに学会の目的達成、社会貢献にも資するものである。

Ⅲ.日本産業衛生学会における研究活動の特性とCOI
ガイドラインでは医学研究全体に係る特性が明らかにされているが、これに加え日本産業衛生学会の活動の特性を明らかにし、求められる対応について考える。
1.臨床医学研究と同様、本学会での研究においても人を対象とする研究が主要なもののひとつであることに変わりはなく、被験者となる人々の人権擁護、研究対象となることに伴う安全性の確保は医学研究一般と同様に不可欠である。
2.研究結果がその後、許容基準の策定、社会への提言の根拠になることが多く、データ自体や扱い方に対する信頼性が不可欠である。また、研究結果から得られる所見が、その後の政府の政策、国民全体の生活、社会の仕組みにまで影響を及ぼすことが予想され、説明責任、提案などに関わる透明性の確保、利益相反に関わる疑惑の排除などのための努力が強く求められる。
3.臨床系医学会との大きな違いは会員に占める医師の割合が相対的に少なく、保健師、看護師、衛生技術者、医師資格を持たない研究者などの割合が相対的に高いことに加え、研究を主要な活動とする機関以外に所属する会員、例えば企業所属、行政機関所属の会員も少なくないことが挙げられる。これらの点を踏まえた利益相反マネージメントが求められる。

Ⅳ.研究・学会活動に関わる注意事項
研究を行うためには文部科学省・学術振興会の科学研究費補助金など公的な研究資金や民間の資金を利用することも必要になる。本ポリシーでは民間の研究資金をマネジメントの対象とする。なお、研究資金以外の個人に関わる経済的利益もCOIマネージメントの対象となることに留意すべきである。そのために求められることとして以下の点が挙げられる。

1.本学会の利益相反に関する委員会への申告、倫理委員会への申請、学会誌編集委員会への論文投稿、学会における口頭・示説発表の際には研究の資金源などのCOI情報を明らかする。
2.論文作成にあたっては著者資格を明確にし、統計専門家、実験・測定などに関わる技術者、その他の人々の協力を得た場合、これらが著者資格を満たさない場合には、適切に謝意を表し、その所属、資金源、その他の利害関係を記載し、公開する。
3.民間からの委託研究などでは資金源が明確であるが、企業からの奨学寄附金を資金源とする研究の場合、当該企業がスポンサーと見なされることから、一定の基準を設け、それ以上であれば資金源として明記する。

A.以下に本ポリシーが関わるCOIマネジメントの対象を具体的に示す。
(1)COIマネジメントで取り扱うべき個人への利益
1.顧問就任の有無
2.株保有に伴う利益
3.特許使用料
4.講演料
5.原稿料
6.委託研究・共同研究に伴う資金提供
7.奨学寄附金の提供
8.寄附講座所属
9.社会儀礼の程度を超えた高額の贈答品の提供
10.その他各学会独自の判断で利益と見なされるもの
(2)COIマネジメントの対象となる研究・学会活動に関与する個人
1.研究成果を学術講演などで発表する会員
2.各学会誌などで研究論文を発表する会員・非会員
3.学会役員(理事長、理事、監事)、学会誌編集委員長、各種委員会委員長、各学会常設委員会(学術集会企画運営委員会、倫理委員会、倫理委員会、COI委員会など)委員、暫定的な作業部会(小委員会、ワーキンググループなど)委員
4.学会事務局雇用の職員
(3)COIマネジメントのため、個人、及び学会が特段の遵守が求められる活動
1.学会主催の学術集会などでの研究発表、講演
2.学会誌などでの研究発表
3.許容濃度・基準の勧告、社会への提言・意見表明、マニュアルなどの策定
4.臨時に設置される調査委員会、諮問委員会などでの作業
5.企業や営利団体主催・共催の講演会、ランチョンセミナー、イブニングセミナーなどでの発表
(4)COIマネジメントの対象となる学会全体の事業活動
1.学会、全国協議会、その他の学術集会、地方会・部会学術集会などの開催
2.学会機関誌、学術図書などの発行
3.研究及び調査の実施
4.学会名での勧告、提言、意見表明
5.研究の奨励及び研究業績の表彰
6.学会専門医及び専門医研修施設の認定
7.生涯学習活動の推進
8.国際的な研究協力の推進
9.その他学会の目的を達成するために必要な事業

B.特に留意すべき事項
以下に示すCOIについては特に慎重にマネジメントすべきである。また、各研究者の所属機関が定めるCOIガイドラインなどで回避すべきとされる事項も多いので留意を怠ってはならない。
(1)研究代表者
1.研究の資金提供者・資金提供企業の株式保有や役員への就任
2.研究課題の測定法、新技術などに関する特許権ならびに特許料の取得
3.当該研究に関係のない学会参加に対する資金提供者・企業からの旅費・宿泊費の支払い。ただし、企業所属の会員が、通常の手続きにより出張旅費などの形での提供を受ける場合を除く。
4.当該研究に要する実費を大幅に超える金銭(寄附金を含む)の取得、ただし、契約に基づく場合を除く。
5.当該研究にかかる時間や労力に対する正当な報酬以外の金銭や贈答品の取得
6.当該研究に影響を与えうる企業からの労務提供の受け入れ。
7.当該研究成果が企業の利益(販売促進)に直接的に結びつく可能性のある研究の場合、当該企業からの共同研究者(正規社員)の受け入れ

(2)学会役員、委員など
企業・団体との間で、各学会の事業活動や発表の公明性、中立性、妥当性に対して制約を受ける、規制を設ける内容をもつ契約ならびに合意・申し合わせなど取り交わすことは学会の存在そのものの社会的信頼に影響を及ぼすものであり、避けなければならない。

(3)本学会における研究実施者の所属開示に関わる問題
研究実施者が回避すべき事項として研究施設、機関へ派遣された企業所属(正規社員)の派遣研究者、社会人大学院生、非常勤講師が研究成果を発表する場合における当該企業名の隠蔽が挙げられる。但し、産業保健に関する研究では企業に属する産業医などが自ら所属する企業の従業員、設備などを利用して行う研究がしばしば発表されるが、その際所属を研究生などで登録している大学として、勤務先の明示が回避されることもあった。所属を明示することで当該企業が研究の発表に難色を示すことを懸念しての判断と考えられる。事業所内で生じた健康障害に関する報告は、事業者の立場では発表回避を志向しがちである一方、重大な健康障害の発生が明らかで、発表を控えることが倫理的な問題を生じる場合も考えられる。また、本学会の目的に照らして考えると、企業所属の会員は事業者に対して産業保健に対する正しい理解を促す努力も惜しむべきではない。本学会の構成員の特徴を踏まえ、事業所で働く人々を対象とした研究を当該事業所所属の会員が発表する際のCOIマネジメントのあり方について、今後、学会内部でさらに議論を深め、会員の理解を深めることに努めなければならない。

Ⅴ.COI申告
(1)COI申告の方法
COI申告の対象者による申告書の提出時期、提出方法についてはで対象者ごとにCOI細則に明記することとする。

(2)COI申告の対象となる産学連携活動
1.共同研究:企業・組織や団体と研究費、研究者を分担して実施する研究(有償無償を問わない)
2.受託研究:企業・組織や団体から新しい手法、測定法、分析法、機器などに関連して契約に基づいて行う研究
3.技術移転:大学・研究機関の研究成果を特許権などの権利を利用し、企業において実用化すること
4.技術指導:大学・研究機関の研究者などが企業の研究開発・技術指導を実施すること
5.大学発ベンチャー:大学・研究機関の研究成果を元にベンチャー設立を行うこと
6.寄附金:企業・組織や団体から大学・研究機関への制限を設けない研究助成のための寄附金
7.寄附講座:企業・組織から大学への寄附金による研究推進のための講座の設置

(3)COI申告の対象期間
観察研究、疫学研究などは長期間にわたることが多いが、当面申告対象期間を過去1年間として数年間試行的に実施し、その後完全実施のため、数年分申告対象とする方向で検討するものとする。

(4)本ポリシー違反、COI開示違反の疑義が生じた場合
上記の様々な利益相反に関わる回避事項、開示すべきCOI内容の漏れ、虚偽の申告、その他社会的・道義的問題が生じた場合は、学会のCOI委員会が十分な調査と関係者に対するヒアリングを行った上で、深刻なCOI状態であり、説明責任が果たせない場合、理事長は倫理委員会又は利益相反に関する委員会に諮問、その答申をもとに理事会で審議の上、措置や対応を決める。また、これに対する不服申し立て、弁明などの方法も検討する。

Ⅵ.本学会の社会への説明責任
理事長は会員のCOI状態について社会的・道義的な説明責任を果たす必要が生じた場合、理事会の決議を経て必要な範囲で学会内外に開示もしくは公表することができる。この場合、当事者は理事会もしくは決定を委嘱された理事に対して意見を述べる機会を与えられる。ただし、緊急性があり、意見を聞く時間的余裕がない場合はその限りでない。

Ⅶ.COIポリシー、細則に関する教育研修など
学会は学会活動に関わる様々なCOIとそのマネジメントについて、学会、全国協議会などのプログラムや研修会、出版物などの形で会員への周知と理解促進を図るものとする。

 

 
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