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平成17年9月24日開催の第2回理事会にて「作業環境測定検討委員会 委員長田中勇武」より報告がありましたので掲示します。

平成17年9月24日

作業環境測定検討委員会報告

作業環境測定検討委員会
委員長 田中 勇武

  1. はじめに
    作業環境測定検討委員会(以下、委員会という)は、労働衛生関連法制度委員会から委員会の設立要望書が理事長宛提案されたのを受け、平成15年4月25日山口で開催された総会において2年間の非常設の委員会(委員名簿を末尾に示す)として承認され発足したものである。
    付託された検討内容は、わが国における作業環境測定のサンプリング法を場の測定のみに限定することなく、より有効で職場のニーズにあったサンプリング法や評価方法、活用方法を検討することである。委員会は、平成17年4月21日まで計6回開催され、その結果、図1に示す作業環境測定システムとしてまとめたので報告する。

  2. 委員会の目標
    (1)作業環境中に存在するあらゆる化学物質に適用できる作業環境測定システムのあり方について提言する。
    (2)作業環境測定および作業環境評価は、作業環境改善に結びつくものとする。

  3. 作業環境管理
    作業環境管理手法を図2に示す。
    第1ステップは、作業環境中に存在する化学物質の確認である。特に働く人が曝露を受け健康影響を受けると想定される有害化学物質の調査である。具体的には、図3に示すように約5.5万といわれている化学物質の中から働く人の健康に関わる物質、一例としては、有害物質の通知が義務付けられている638物質について使用の有無を確認することである。(ハザードの確認)
    第2ステップは、それら化学物質の保管、管理、使用状況から作業環境中に放出される可能性の把握である。放出が確認されると作業環境中の濃度を測定することになる。現在、法的に測定の義務があるのは、92物質と粉じんの合わせた93物質である。そのうち管理濃度が示されているのは、81物質と粉じんである。このほかの化学物質についての作業環境測定および評価基準については、その手法が示されていない状況にある。(曝露状況の把握)
    第3ステップは、得られた作業環境中の濃度に基づき、作業環境評価基準と比較して、作業場の状況を評価する。(リスクの評価)
    第4ステップは、評価結果に基づき、良好な作業環境と判定された場合は、その環境を維持・快適化し、悪いと判定された場合には、作業環境改善を実行することで進められる。(作業環境改善)

  4. 提案した作業環境測定システム
    図1に委員会が提案した作業環境測定システムの概要を示す。

    (1)作業環境測定の目的
    委員会では、現在、作業環境測定法に基づいて実施されているA測定、B測定が、作業環境管理において、重要なかつ多大な役割を果たしていることを確認した上で、これに加えて、作業環境測定について検討することとした。
    委員会で検討する作業環境測定は、作業環境改善に結びつくものとした。
    評価の結果、悪いと判断された場合、個人保護具を使用すればよいという発想もあるが、まず、作業環境改善を実施して、個人保護具を使用しなくてよい作業環境を実現することを目的とした。

    (2)対象化学物質
    安衛法では92物質と粉じんの作業環境測定について規定しているが、それ以外の物質をどうするのかが課題となる。
    委員会では、対象とする化学物質は全化学物質とするが、当面は、作業場で使用される有害性の通知が必要な638物質について検討した。

    (3)有害物質の放出
    有害物の放出については、使用・密閉の有無や非定常時の作業も含めて検討するかによって異なるが、NIOSHのように書類審査という方法を第一段階として、放出の確認事項を記載することとした。

    (4)一次スクリーニング

    1. 目的
      作業環境中に放出された化学物質の濃度が、アクションレベル(AL値)以下であるかどうか確認することを目的とする。
    2. 測定機器
      簡易測定器に限定することなく、リアルモニタリング機器や測定可能な機器を広く利用する。
    3. 測定箇所
      作業者の呼吸域において最も濃度が高くなる1点を測定する。
    4. 評価基準値(アクションレベル)
      AL値 = 0.3x許容濃度等(PEL)とする。

    (5)測定回数の低減化
    定期的1次スクリーニングにおいて、常に良好な結果がえられた場合に測定回数を減らすことが合理的であることから、3回連続して測定値がAL未満であった場合には、測定回数を減らすことや計測を簡便化することとした。例えば、金属物質が対象物質であった場合は、これを粉じん測定で代用することなどが考えられる。

    (6)二次スクリーニング

    1. 目的
      作業環境改善に結びつく測定と評価を目的とする。
    2. 測定法
      作業者の呼吸域において最も濃度が高くなる1点を測定することを義務付ける。
      これに、次のいずれかを組み合わせる。
      (1)個人サンプラー
      (2)リアルタイムモニタリング
      ・A測定とB測定が実施されている場合には、二次スクリーニングの結果として利用できる。
    3. 個人サンプラーによる測定の概要
      (1)被測定者の数
      グループ内で暴露濃度が高い作業者が推定できる場合は、その者を含めて、
      下記の表による。推定できない場合は、ランダムに下記の表による。

      1 2 3-7 8-12 13-17 18-22 23-27 28-32
      1 2 3 4 5 6 7 8

      N:作業者数 n:被測定者数

      (2)測定時間
      各人2時間以上。

      (3)評価基準
      各測定値を許容濃度等(PEL)と比較する。

      (4)評価結果
      ・測定値 > 許容濃度等(PEL)の場合
       作業環境改善を実施し、二次スクリーニングを実施する。
      ・AL ≦ 測定値 ≦ PEL の場合
       定期的二次スクリーニングを実施する。
      ・測定値 < AL の場合
       定期的一次スクリーニングへ簡易化して実施する。

    4. 今後の課題

      (1)人材の養成

      1. 対象とする化学物質が5.5万と膨大になり、これらのハザード情報の収集・解析ができる人材を養成する。
      2. 有害物質の放出の段階において、的確に作業環境中に放出されるか否かを判断できる人材を養成する。
      3. 適切な作業環境測定手順、測定機器を選択でき、実施できる人材を養成する。

      (2)判断基準値の選択

      1. 許容濃度、TLV値、管理濃度の選択の指針について
      2. 判断基準値が公表されていない物質の評価値の取り扱いについて

      (3)測定場所
      最も高濃度となる時間および場所の選定方法について

      (4)測定機器の開発

      1. 現状では、測定や分析ができない化学物質もあり、各物質の性状を考慮して、適切な測定機器を開発する。
      2. リアルタイムモニタリング機器については、作業環境状態を連続して測定できることから、作業環境の測定と評価において有用な機器と考えられることからその開発を進める。

      (5)測定結果の運用と活用
      委員会で提言した測定法と判定法は、実際にこれを実施した結果に基づき、問題点が見つかれば、これを改良して、よりよい作業環境測定システムとして定期的に見直し、活用を図る必要がある。

    5. おわりに
      委員会のまとめを図1に示した。
      このシステムを具体的に運用、推進するためには、今後の課題でふれたように克服すべき課題はあるが、実現不可能なものは無く、学会員の創意と工夫で、一つずつ解決していくことが求められる。
      委員会の提案が、作業環境管理に役立つ、作業環境測定・評価システムを確立するための第一歩となることを願っている。

      委員会名簿
      委員長 田中勇武(産医大)
      委員 伊藤昭好(労研)、伊藤雅代(キヤノン)、宇土 博(日新製鋼)、熊谷信二(大阪公衛研)、甲田茂樹(高知医大)、小西淑人(日測協)、佐藤 洋(東北大)、武林 亨(慶応大)、中明賢二(麻布大)、名古屋俊士(早稲田大)、花岡知之(国立がんセンター)、 保利 一(産医大)、堀江正知(産医大)、宮本俊明(新日鐵)、山田誠二(松下産衛センター) (50音順)

       
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