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働く人を喫煙と受動喫煙の害から守るためのたばこ対策宣言(pdf)

平成23年4月2日


日本産業衛生学会
働く人を喫煙と受動喫煙の害から守るためのたばこ対策宣言


(社)日本産業衛生学会
理事長 大前和幸


 世界保健機関(WHO)は、喫煙と受動喫煙による健康への悪影響から現在および将来の世代を保護することを目的とし、 2003 年「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」を採択し、2005年に発効した1)。 本条約は締約国に対して、価格の引上げ(第6条)、職場・公共の建物内の100%禁煙化(第8条)、パッケージの警告の強化(第11条)、 広告・販売促進・後援の規制(第13条)、禁煙治療の普及(第14条)などに取り組むように求めている。
 わが国では、2000年以降、健康日本21、健康増進法、特定健康診査、がん対策基本法などで喫煙対策を含む施策が施行されてきた。 多くの医学関係の学会・組織が禁煙宣言を採択し、日本学術会議も2008年に政府への要望書「脱たばこ社会の実現にむけて」2)、 2010年提言「受動喫煙防止の推進について」3)を発表しているが、諸外国に比べると取り組みは遅れている。 現在、日本における成人の喫煙率は22%と近年減少傾向にあるが4)、勤労世代の男性喫煙率は40%を超えており、 業種によっては50%を超えている場合もある5)。若い世代の女性の喫煙率は上昇も危惧されており、早急な対策を講じなければならない。
 喫煙および受動喫煙の有害性は広く認識されつつあるが、マスメディアを通じて喫煙は嗜好の問題であるという考え方がまだ流布されており、 若い世代での禁煙・防煙活動の障害となっている。現在、健康に関わる団体・組織における喫煙・受動喫煙の有害性の広報と教育活動は、極めて重要である。
受動喫煙が死亡、疾病及び障害を引き起こすことはすでに科学的に明らかであり6)、受動喫煙による有害物質への曝露を完全に防止するためには分煙では不十分で、屋内禁煙とすべきであることが上記の国際条約の履行のためのガイドライン7)において示されている。また、2010年5月26日の厚生労働省「職場における受動喫煙防止対策に関する検討会」報告書においては、今後の受動喫煙防止対策の基本的方向として、「快適職場形成という観点でなく、労働者の健康障害の防止という観点から取り組むこと」の必要性が示された8)
職場の禁煙化は大規模事業場を中心に進んできているが、その一方、中小規模の事業場やサービス産業では受動喫煙防止対策の遅れがあり、職業的に長時間の受動喫煙に曝露されている集団も存在する。また、定期健康診断における禁煙支援は喫煙率の低減に有効であるが、実行している事業場は未だ十分ではなく、取り組みの推進が必要である。
 以上を踏まえて日本産業衛生学会は、働いている人の健康を守り、さらなる健康の増進を目標とする学会として、 喫煙による健康被害を総合的に防止するために、次に掲げる喫煙対策を職場で推進するとともに、関係機関と協働して社会に働きかけることを宣言する。

1.働く人の環境を安全に保つため
・タバコ煙は発がん性物質であること9)を周知し、管理の強化を求める
・サービス産業を含むすべての職場の受動喫煙の防止を進める
・就業時間中の喫煙の禁止の実現に取り組む
・建物内禁煙、さらには敷地内禁煙を実現する(喫煙所と職場の往復は間接曝露となるため敷地内喫煙所廃止を進める)

2.働く人の健康をタバコの害から守るため
・健康診断や保健指導の場ですべての喫煙者に禁煙することを勧奨する
 特に、喫煙により影響が増加あるいは増幅される有害業務従事者や健康診断の喫煙に関連した有所見者には強く禁煙を勧告する
・禁煙を希望するすべての者に禁煙支援と治療機会に関する情報提供を奨励する

3.産業医学、産業保健に携わる者として
・役員や専門医をはじめ全会員が喫煙しないことを目指す
・理事会、部会、委員会、研究会において喫煙対策に関する積極的な活動を推進する
・禁煙に取り組む諸団体・組織との協力・協働を推進する

以上の活動を通じて、すべての働く人が健康に過ごすことができる安全な職場としてタバコ煙のない環境を実現し、更には禁煙推進を通じて広く脱タバコ社会を目指す。

本宣言は、職域における喫煙対策研究会によって起案され、理事会が学会としての宣言としてまとめたものである。

1) WHO Framework Convention on Tobacco Control. Geneva, 2003
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/treaty159_17.html(外務省による日本語訳)
2) 日本学術会議 要望「脱タバコ社会の実現に向けて」 2008年3月
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-20-t51-4.pdf
3) 日本学術会議 提言「受動喫煙防止の推進について」2010年4月6日
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-21-t93-1.pdf
4) 労働基準局「職場における受動喫煙防止対策に関する検討会」報告書骨子案.2010年2月15日
5) 自動車製造業における建屋内禁煙の取り組み.産衛誌 51巻(臨増), 119, 2009
6) 厚生労働省「受動喫煙防止対策のあり方に関する検討会」報告書. 2009年3月24日
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/03/s0324-7.html
7) 第2回「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」締結国会議採択「たばこの煙にさらされることからの保護に関するガイドライン」(FCTC第8条履行のためのガイドライン)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/03/dl/s0326-14i.pdf
8) 平成20年12月25日「平成19年国民健康・栄養調査概要」:厚生労働省
9) 平成22年度日本産業衛生学会総会議事録 産衛誌 52巻, A72, 2010

 
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